京都にある登録有形文化財「栗原邸」の一般公開に5年ぶりに行ってきました
京都山科の琵琶湖疎水のほとりにある登録有形文化財「栗原邸(旧鶴巻鶴一邸)」が、5年ぶりに一般公開されるということを、一般社団法人リビングヘリテージデザイン(旧住宅遺産トラスト関西)のFacebookで見て、京都まで行ってきました。
前回の一般公開で内覧したのは、コロナがはやる前の2018年。それから早5年。光陰矢の如し。月日が経つのは、本当にあっという間です。
文化的評価の高いこの建物は、昭和4年(1929年)に、建築家で京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)の教授であった本野清吾の設計により、学長であった鶴巻鶴一邸として建てられたコンクリートブロック造3階建ての住宅です。
昭和16年(1941年)には、日本最古の広告代理店の社長を務めた栗原伸に譲られ、戦後は進駐軍に接収され、将校の住宅として利用された歴史もあり、2007年にモダニズム建築の保存に関する国際組織 DOCOMOMO Japan から、優れた日本のモダニズム建築として選定され、2014年に国の登録有形文化財に登録、2017年に、京都市による「京都を彩る建物や庭園」に認定されています。
天智天皇山科陵のある、京都市営地下鉄東西線「御陵(みささぎ)駅」から、山に向かって住宅街を進むこと10分。
琵琶湖第一疎水のほとりの、緑に囲まれた静かな住宅街に建っています。
外観はむき出しのコンクリート。建築家中村鎮の考案した、中村式鉄筋コンクリート(通称鎮ブロック)を用いています。
鎮ブロックは、L字のコンクリートブロックを互い違いに組み合わせて作った中空部に、配筋しコンクリートを打つことで強度を高めた、鉄筋コンクリート造で、学長の鶴巻鶴一から依頼された本野精吾は、中村式鉄筋コンクリートで建てられた建物が、関東大震災で倒壊しなかったことに着目し、採用したようです。
円い庇と円柱の組み合わせの玄関
デザインがとっても気になる玄関の照明
雨漏りによる傷みが激しく、修復もなされずに放置されていたようですが、リビングヘリテージデザインの尽力により、平成23年(2011年)から京都工芸繊維大学大学院の教育プログラムの一環として、屋上防水工事や、電気給排水設備の修復、室内の漆喰修復作業が継続的に行われているそうです。
室内は、染色家でもあった鶴巻鶴一のろうけつ染めの襖絵や、アールデコ風の照明や家具が残っています。
玄関の円く突き出た部分の上にあたるサンルーム。
家具も本野清吾の作品で、当時の物。
3階の屋上へ続く階段。
リズムよく並んでいる段違いの窓
屋上からの景色は、見渡す限り緑。鳥の声や木々を抜ける風の音が心地よい空間です。
実はこの文化的価値の高い建物は、リビングヘリテージデザインで、保存を前提とした活用で継承してくださる方を探しています。
価格は2億円。
間取りと概要です。
【概要】
敷地面積:991平米
延床面積:393.83平米 (1階198.55平米 2階145.69平米 3階49.59平米)
地域地区:第一種低層住居専用地域
※京都市景観重要建造物または指定文化財に指定し、継承してくださる方に限ります
前回は訪問することができなかった、同じ京都市内にある本野清吾邸も行ってみました。
こちらも鎮ブロック造。建築事務所が入居しているそうです。
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