有田焼で有名な佐賀県有田町に、不動産の視察に行ってきました。

佐賀県有田町に、企業のサテライトオフィスを誘致するという事業を、行政と共に活動している方からお誘いいただき、有田町に行ってきました。

サテライトオフィスとは、本社・本拠地から離れたところにあるオフィスのことを言います。
本社や大規模な支社とは別に、小規模なオフィスを離れた地域に作ることで、企業にとっては、本社のみでは雇用できなかった人材を確保することができるようになったり、ビジネスエリアが広がったりといったメリットがあり、被雇用者にとっては、自宅から近い場所で勤務ができることで、時間にゆとりができるというメリットがあります。

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有田町は、『町の魅力』(重要伝統的建造物群保存地区のある町並み、棚田で作る米や酒がうまい、新鮮な魚介類)と『人材』(クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんが、課外授業を行なう、デザイン科のある有田工業高校や、佐賀大学芸術地域デザイン学部の有田キャンパスがある)の2つの魅力で企業を誘致し、若者の就職先を確保することで、人口・人材の流出を防ぐことに力を入れているようです。

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私は、不動産を取り扱う立場から、対象とする企業の立場からみて、借りやすい物件・購入しやすい物件とはどういう条件のものなのか、オーナーへアドバイスする役割でした

有田町ってどんな町?

有田町は、佐賀県の西、長崎県と隣接する、有田川沿いの山に囲まれた盆地にあります。

東京からは、佐賀空港、長崎空港、福岡空港の3か所へ飛び、電車か車で移動します。
フライト時間が約2時間弱。空港から車移動だと40分から1時間半、電車だと2時間から2時間半前後です。
各空港からのアクセスは、有田観光協会のサイトをご覧ください。
https://www.arita.jp/access/

産業としては、磁器の有田焼で有名ですね。日本の磁器の発祥の地であり、毎年ゴールデンウイークの時期に行われる有田陶器市には、その期間で110万人の人々が訪れるそうです。

今でも窯元が多く残っており、当時の建物や煙突を残した風景は、風情があります。

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窯元の屋敷や商家が残る有田内山地区は、有田千軒として、1991年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。

有田内山地区を歩いてみました。

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瓦葺の建物ですが、屋根の反りとか二階の窓回りとか、どことなく中国とか大陸の雰囲気を感じるのは、私だけでしょうか。
有田に磁器をもたらした、李参平が朝鮮出身ということからなのか、もともと九州には多い建物の造りなのかは分かりませんが、そんなところに思いをはせながら巡り歩くのも面白そうです。

有田町の不動産について

不動産情報は、レインズやポータルサイトを見ても、情報数はさほど多くありませんでした。
有田町のまちづくり課から委託を受けた、NPO法人灯す屋(https://tomosuya.com/)の方がより多くの情報を得られそうです。

ただ、住居用の売買物件の割合が圧倒的に多いので、サテライトオフィスとして利用する賃貸物件を探す場合には、こちらと、まちづくり課と両方に問い合わせた方が情報は集まりやすいのかもしれません。

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江戸後期の古民家を含め3物件を見せていただきました。

すべて賃貸物件で、賃料等の条件はこれから決めるようで、『灯す屋』にも掲載されていませんでした。こういうケースもあるので、やはりまちづくり課へも問い合わせた方が良さそうですね。

参考に売買物件も1物件見せていただきました。

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1990年築の鉄骨造3階建て
建物面積は165.33平米で1,100万円。
地元の金融機関のローンの条件も良さそうですし、改修費用に町の助成金もあるということなので、バランスシートとキャッシュフローで判断すると、手元資金も少なく始められ、こういう物件なら借りるより購入した方が良さそうな気もしました。

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地元の不動産会社に不動産の流動性について聞いてみたところによると、不動産会社の広告の仕方も、近隣エリアを対象としたものがほとんどで、都市部への広告はあまりなされていないようでした。
もし、町の魅力や取得のしやすさをうまく伝えられ、都市部からのニーズを引き込めるような募集活動が行えるようになれば、より価値を上げられ、その分リスクも減るのではないかなとも思いました。

町の助成金について

サテライトオフィスを開設するにあたっては、町から次のような補助金制度があるようです。

■入居物件に対して
購入・賃貸を問わず、物件の改修や設備導入の投資額の半分(上限1,500万円)の補助。
購入した場合は、3年間固定資産税支払いの補助。
賃貸した場合は、2年間オフィス賃料の半額まで補助。
■雇用に対して
研修費用の補助(新規雇用者1人につき上限20万円)
雇用奨励金(新規雇用者1人につき50万円)
■その他
関連部署や、教育機関、陶磁器製造業者や商社、組合への紹介。

現在、茨城県のAI・人工知能の開発企業、長崎県のネットショップ運用企業、福岡県のイベント企画企業の3社がサテライトオフィスを開設しているようです。

有田町での宿泊と、観光

宿泊は、陶磁器のショップ22店舗が軒を連ねる『アリタセラ』の一角にある、『arita huis
(アリタハウス)』。レストランも併設し、食事も楽しめます。
メゾネットタイプで、ホテルとは違ったゲストハウスのようなおしゃれな内装は、旅の思い出をより豊かにしてくれました。

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観光として回ったのは、有田内山地区の陶山神社や泉山磁石場、トンバイ塀のある裏通りなど。

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大谷石の採石場や石切山脈と、各地の採石場もみてきましたが、ここも同じように、文化を支えてきた貫禄や、歴史を感じました。ここの石は、加工するには難易度が高く、今ではあまり使われていないそうですが、当時の工法を守る窯には重宝されているそうです。

陶山神社は、磁器でできた鳥居が見どころと思いきや、『鳥居の前を横切る線路』に目を奪われました。参拝には線路を渡らなければならない神社です。

『なぜこんなところに線路が』というと、窯元の近くでは、振動や煤が磁器に良くないということで、街道から一段上がったところに作られたそうです。山に囲まれた盆地で、利用できる敷地が少なく、止む無くということなのでしょう。

他にも、棚田の風景や、ツヴィンガー宮殿を模したポーセリンパーク、有田温泉など、見どころはいくつもあります。

まとめ

実際に活用している企業のサテライトオフィスを見学し、そこで働く人へインタビューしたり、不動産を見たり、現地不動産会社に市況を聞いたりと、東京での暮らしとも比べてみて、視点や思考を変えることで見えてくるものもありました。

コロナ禍もあってか、観光客らしき人もおらず、お店も閉まっているところが多く、本来の町の状況を感じることができなかったのは残念ですが、有意義な時間を過ごせました。

サテライトオフィスの誘致については、町の助成金の手厚さや、町長のお話から本気度を感じました。

不動産との関わり方については、借り手側への『賃貸情報・売買情報の提供』だけでなく、金融機関の融資状況の情報提供や、都市部をはじめ地域外への情報提供を促進し、流通を活性化させるなど、より多面的に考えていく必要があるかと思いました。

購入に関しては、すべてを自己資金で賄うという考え方では、額が大きすぎて二の足を踏んでしまいますが、ローンが組めるのであれば、自己資金は少額で済みますし、返済額の方が賃料より安く済ませられる場合もあります。

流通が活性化されれば、売却することも容易になり、投資へのハードルも下がります。

そういう良い流れができれば、サテライトオフィスだけでなく、それ以外の事業誘致も可能になるでしょうし、町の活性化にもつながる、より面白い仕組みになるのかなぁということを話し合えた、良い旅でした。

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四方田裕弘
  • 四方田裕弘
  • 1976年生まれ、東京生まれ東京育ちで2人の娘の父です。建物、特に近代建築が好きで、ちょっとした旅行でも近代建築を探し当て、見に行ってしまいます。

    【保有資格】CPM(米国不動産経営管理士)/(公認)不動産コンサルティングマスター/ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士/管理業務主任者/相続アドバイザー