アレックス・カーの「犬と鬼」を読んで、桃源郷祖谷の里に体験宿泊
アレックス・カーをご存知でしょうか?
アメリカ人の東洋文化研究家。学生時代に日本全国をヒッチハイクしてまわり、たどり着いた徳島県の東祖谷山村に江戸中期の茅葺古民家を購入、古民家宿泊施設「篪庵(ちいおり)」として再生した、古民家再生で有名な方です。
古民家改修や町屋再生事業に携わり、2010年から東祖谷山村の近くの落合集落に、8棟の古民家を改修し、篪庵と合わせて、「桃源郷祖谷の里」として宿泊施設を運営しています。
犬と鬼を知ったのは、確かルース・ベネディクトの「菊と刀」かポール・クローデルについて調べていた時だったか、忘れてしまいましたが、視点を変えた日本文化の本つながりだったように思います。
田舎に行くと住んでいる人は「何もないところ」といいますが、都会に住んでいる人は「ないものがたくさんある」といい、それぞれの環境や視点で、価値はだいぶ変わるもの。自身では気づけない視点をくれるので、そういう本はなるべく読むようにしています。
「桃源郷祖谷の里」は、古民家再生・運営とアレックス・カーと複数の興味がつながったので、体験してみることにしました。
徳島といっても、ほぼ高知
「桃源郷祖谷の里」のある落合集落の住所は、徳島県三好市東落合。国の重要伝統的建築物群保存地域に指定されています。平家の落武者がたどり着いて定住した村だという伝説もあり、山間の斜面にひっそりと佇む小さな村です。
東京からだと、徳島阿波おどり空港、高松空港、高知龍馬空港の3か所からのアクセスがあり、高知龍馬空港が最も近いようですが、今回は、鳴門海峡も行ってみたかったので、徳島阿波おどり空港からレンタカーで行きました。
高速半分、山道半分の道のりを約3時間、途中大歩危峡やかずら橋に寄り、のんびり行けばいいかなんて思っていましたが、なかなか進まない山道に、思ったより時間がかかり、チェックインはギリギリになってしまいました。車が一台やっと通れるような狭い道もあるので、これから行かれる方は、早めのチェックインをお勧めします。
内装は超近代的な茅葺古民家
管理事務所は元落合小学校の校舎。ここでチェックインし、車で予約した古民家「雲外」へ。
この地域の昔からの手法という、平積みの緑泥片石を基礎にした茅葺屋根の主屋に、新たに浴室とトイレを増築した部屋です。
割竹の壁に茅葺の屋根の外観とは正反対に、設備は超近代的で、玄関の板戸はオートロック、エアコン、床暖房、Wi-Fi、IHクッキングヒーター、オーブンレンジなど、ちょっとしたリゾートホテルより整備されています。
素泊まりが基本で、周りにはカフェやレストラン、コンビニもありません。食事は、自前で用意するか、オプションで用意されている「ケータリング」「地元のお母さんとつくる郷土料理」「一般家庭で楽しむ普段着の夕食」利用するかです。
調理器具も調味料も整っているので(ウォーターサーバーもあります)、自炊がお勧めです。車で1時間のところにある大歩危駅前にある歩危マートで仕入れた食材で自炊にしました。
歩危マートでは祖谷の特産品や郷土料理も売っています。
空間と時間を五感で楽しむ、喧噪の続く都会では味わえない活動のメリハリ
日が落ちるにつれて、気温も落ち、あらゆる音も消えていきます。一日の終わりを五感で感じ、静寂とピシッと締まる空気のなかで過ごす時間は、都会では味わえないものでした。
朝は、茅がぴしっぴしっと鳴く音、鴬などの鳥の声で、目が覚めます。
翌朝、散歩に出ようと靴を履いたら、中にいたスズメバチに刺されるという、人生初の経験も。地元に人に聞いたら、ちょうど、歴史民俗資料館にある医院がやっているということでしたので、診てもらい、ひと安心。
どうも茅葺は、虫や小動物のねぐらにもなっていて、夜中に這い出して来るようです。昔は囲炉裏の煙で燻していたので殺虫効果があったのですが、炭ではそれができないので、どうしても居ついてしまうとか。
煙で燻せないというこは、梁に使われている木や、屋根の茅の耐水性や強度が弱くなってしまうという影響もあるそうです。
歴史的建築物の保存形式には、いろいろな見解がありますが、最も難しい方法ではありますが、本来の生活様式や環境の中での保存が最も適しているのでしょう。
山道で、行き帰りの車で時間を取られてしまい、1泊2日だと他を見て回ることができませんが、宿での時間だけでも十分楽しめます。折角行くのだからと、いろいろと寄り道をしてしまいましたが、桃源郷祖谷の里に浸るためだけの旅でもよかったかな、なんて思いました。
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